WebサイトやLPを制作するとき、デザインやコーディングと同じくらい大切だと私が考えているのが、制作前の「ヒアリング」です。
私は64歳からデザインを学び、現在Web・グラフィックデザイナーとして仕事をしています。
その前は、約40年間営業の仕事に携わってきました。
一見すると、
「営業」と「デザイン」はまったく違う仕事
に見えるかもしれません。
しかし、実際にWeb制作の仕事を始めてみると、営業時代の経験がとても役立っています。
先日、あるサービスを自分自身が「売られる側」として体験する機会がありました。
約2時間の体験でしたが、
「良いヒアリングとは何だろう?」
と改めて考えるきっかけになりました。
今回はその体験から、WebサイトやLP制作で私が大切にしているヒアリングについてお話しします。
今回利用したサービスでは、担当者からいろいろな質問を受けました。
しかし、
「私は何に困っているのか」
「何を解決したくてここに来たのか」
については、あまり深く聞かれませんでした。
そのとき気づいたことがあります。
「商品を売るためのヒアリング」と、
「お客様の困りごとを知るためのヒアリング」は違う。
ということです。
これはWeb制作でも同じです。
たとえば、お客様から、
「ホームページを作りたい」
というご相談をいただいたとします。
制作側としては、
「何ページ必要ですか?」
「WordPressを使いますか?」
「お問い合わせフォームは必要ですか?」
「いつまでに必要ですか?」
と聞きたくなります。
制作するためには、もちろん必要な情報です。
しかし、私はその前に、
「なぜホームページを作りたいのですか?」
を知りたいと思っています。
なぜなら、
ホームページを作ること自体がお客様の目的ではないからです。
その先には、
「問い合わせを増やしたい」
「新しいお客様を獲得したい」
「会社の信頼感を高めたい」
「サービスの良さをもっと伝えたい」
「採用応募を増やしたい」
など、本来解決したい課題があります。
そこで私が最初に聞きたいのは、
「現在、何に困っていますか?」
「今回、制作しようと思ったきっかけは何でしょうか?」
「完成したあと、どうなったら成功だと思いますか?」
ということです。
目的が分かって初めて、
「では、どんなWebサイトを作るべきか」
を考えることができます。
お話を聞いた結果、
「新しいホームページを作る必要はない」
という結論になる可能性もあります。
既存サイトの一部を改善するだけで十分かもしれません。
LPを1ページ作ったほうが効果的かもしれません。
紙のパンフレットを作ったほうが目的に合っていることだってあります。
制作する側からすれば、新しいWebサイトを受注したほうが売上になります。
でも、それがお客様の目的に合っていなければ意味がありません。
私は営業時代から、
「売らない」という選択肢を持っている人のほうが、結果として信頼される
と考えてきました。
Web制作でも同じだと思っています。
初めてWeb制作を依頼する方は、
「何を伝えればいいのだろう?」
と迷われることがあると思います。
でも、
「どんなレイアウトにするか」
「何色を使うか」
「どこに写真を配置するか」
といったデザインの答えを、最初から用意していただく必要はありません。
むしろ私が知りたいのは、
誰に見てもらいたいのか。
その人に何を感じてもらいたいのか。
現在何に困っているのか。
Webサイトを見たあと、何をしてもらいたいのか。
です。
これらが分かれば、デザインを考えることができます。
具体的な例を挙げてみます。
お客様から、
「お問い合わせボタンをもっと大きくしてください」
というご要望をいただいたとします。
もちろん、大きくすることはできます。
しかし、
「50代以上のお客様が多いので、迷わず問い合わせできるようにしたいんです」
と目的まで教えていただければ、私が考えられる範囲は一気に広がります。
ボタンを大きくする。
文字も読みやすくする。
色のコントラストを調整する。
電話とフォームのどちらが利用しやすいか考える。
ボタンに到達するまでの説明を分かりやすくする。
そもそもボタンの位置を変える。
といった提案ができます。
つまり、
「どう変えてほしいか」だけではなく、
「なぜ変えたいのか」を共有していただく。
これが、より良いデザインにつながります。
私は、ヒアリングとは「お客様の指示を聞くこと」ではないと思っています。
たとえば、
「高級感を出したい」
と言われたとします。
そこで黒と金を使えば、高級感らしいデザインにはなるかもしれません。
でも、私はもう少し聞きます。
「なぜ高級感を出したいのでしょう?」
「安い会社だと思われたくない」
という理由かもしれません。
「価格ではなく技術力で選んでほしい」
のかもしれません。
「富裕層のお客様を増やしたい」
のかもしれません。
理由が違えば、表現すべき「高級感」も変わります。
だから、
言われた言葉をそのまま形にするのではなく、その言葉の奥にある目的を聞く。
営業経験が、現在のWeb制作で最も役立っているのは、この部分かもしれません。
ヒアリングした後は、提案です。
私は、
「これが正解です」
と一つの答えを押しつけるより、
「Aならこうなります」
「Bならこうなります」
と違いを説明したうえで、
「今回の目的なら、私はAをおすすめします。その理由は……」
とお伝えすることを大切にしています。
デザインは感覚だけで決めるものではありません。
「私はこっちが好き」
だけではなく、
「今回のターゲットと目的を考えると、こちらのほうが適している」
という理由を説明する。
そのうえで、最終的にはお客様に選んでいただく。
それが私の考える「提案」です。
素材の見栄えだけでなく、内容と配置への適合を見て写真を選びます。次回は、写真に文字を載せるときの分け方や背景処理を学びます。
私は64歳からデザインを学び始めました。
デザイナーとして見れば、決して長いキャリアではありません。
一方で、その前には約40年間の営業経験があります。
以前は営業とデザインを別々の仕事として考えていました。
しかし現在は、そう思っていません。
営業もWeb制作も、
相手の話を聞く
↓
困っていることを整理する
↓
本当の目的を見つける
↓
解決するための選択肢を考える
↓
理由とともに提案する
という点では、とてもよく似ています。
だから私にとってヒアリングは、単なる「制作前の確認作業」ではありません。
デザインを考え始める最初の工程です。
WebサイトやLPを依頼するとき、
「まだ内容が整理できていないから、相談するのは早いかな」
と思われる方もいるかもしれません。
私は、むしろその段階からお話を聞きたいと思っています。
「何を作ればいいのか分からない」
でも構いません。
「今のホームページに何となく不満がある」
でも構いません。
「問い合わせを増やしたいけれど、何をすればいいか分からない」
でも構いません。
最初から答えを用意していただく必要はありません。
まず、
「今、こんなことで困っています」
と聞かせてください。
そこから課題を一緒に整理し、
誰に、何を伝え、どう行動してもらうためのデザインなのか。
を考える。
そのうえで、Webサイトなのか、LPなのか、あるいは別の方法なのかを考えていく。
約40年間の営業経験と、現在のデザイン制作の経験。
その両方を使って、
「言われたものを作るだけではなく、なぜ作るのかから一緒に考える」
そんなWeb・グラフィックデザイナーでありたいと思っています。
64歳からデザインを学び始め、現在はWebと印刷物のデザインを制作しています。このシリーズでは、デザイン経験がない方にも分かる言葉で、デザインの基本と作り方をお伝えします。
ハッシュタグ:#デザイン #営業 #仕事 #ヒアリング